- 苦労の割りには、評価や報酬へ反映されにくい
- 出向は繰り返し行われる可能性がある
子会社で働いていると、どうしても「出向」というものがまとわりついてきます。
出向には「在籍出向」と「転籍出向」の2パターンありますが、本記事は「在籍出向」に関しての記載になります。
- 在籍出向:籍は出向元に置いたままで出向先の業務に就く…略して「出向」
- 転籍出向:籍も業務も出向先に異動する…略して「転籍」
子会社から親会社への逆出向は、昇給・昇格に不利だった
出向未経験の後輩が先に社員等級アップしていたと、帰任後に発覚しました(泣)…
出向は昇給・昇格等の査定に対して不利に働くことがあります。
なぜなら、出向者は本籍企業に残っている社員と比較して正当に評価されにくい傾向があるからです。
出向することで、「仕事は出向先企業で行うけど、査定は本籍企業(出向元)から受ける」状態になります。
仕事上の上司と評価者が異なるという点は、派遣社員として働いている方と似ていますね。
出向が開始されると、定められた期間を満了するなり、遂行中のプロジェクトが完結するまでの期間、出向者は本籍企業に顔を出すことはほとんどなくなります。
普段の働きぶりを出向先上司に見せることはできますが、査定者である本籍上司には働きぶりを見せることはできません。
出向者が出向先でどんなに成果を上げて業績に貢献しても、本籍の上司にとってみれば、出向先での業務は直接的に本籍企業の業績に無関係なので、高い評価に値しないと判断するかもしれません。
出向元上司としてみれば、自分の見えないところで、自部門の業績に直接影響しない業務を行っている出向者よりも、
自部門の業務を身近で直接行っている「自社に残っている社員」のほうを優遇してしまうことも致し方ないことです。
出向社員の査定問題は、業務命令を下す上司と評価を下す上司が一致していないために起きてしまう問題です。
【対処方法】本籍企業から正当な評価を受けるために
出向先上司と本籍企業(出向元)の上司との間で定期面接をもってもらう
本籍企業の上司が、出向者の働きぶりや成果を確認せずに低評価を下していれば、納得いかないでしょう。
だからと言って、出向者本人が直接抗議しても物事は進展しません。
解決方法としては、上司同士に定期面談を実施してもらうことをお勧めします。
出向者が業務の成果等を出向先上司と面談し、出向先上司を通して本籍企業(出向元)の上司が評価を決めるようにします。出向先上司の判断も加味して評価ができるので、出向者本人の評価に対する納得感が上がります。
逆出向先の親会社では、子会社社員は同一賃金同一労働が認められなかった
- 出向先の社員と業務内容は同じだが、給料は全然違う。(子会社社員の方が低い傾向にある)
- 子会社社員の給料が安い分、仕事が少ない訳ではない。
・親会社の新卒社員は、入社時点で当時の私より給料が数万円高かった。
・給料は格安だが、仕事のノルマは親会社社員1人分と同じだった。
現在の「同一労働同一賃金」制度は、子会社から親会社へ出向となった社員にとって報いがある制度とはなっていません。
政府の働き方改革関連法の改正により、「同一労働同一賃金」が施行されました。
「同一労働同一賃金」には、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇の確保が謳われています。
能力や成果が同じならば、雇用形態に依らず均等な待遇を確保せよ、ということです。
残念ながら、この「同一労働同一賃金」は、子会社からの出向社員には適用されません。
以下に示した厚生労働省のガイドラインの通り、 同一労働同一賃金の制度は正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間に対して適用される制度となっているためです。
したがって、同じようなスキルや経歴であっても、 子会社社員の給料が、出向先の親会社社員と同等に引き上げられることはありません。(企業によっては、出向手当である程度は補填されるところもあるでしょう。)
給料が安い分、任される仕事が少ないかというとそんなことはなく、親会社の正社員と同じレベルのノルマや業務配分がなされます。
本ガイドラインは、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものです。
出典:厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを示しています。
逆出向先の親会社上司から、子会社の新人設計者は歓迎されなかった
- 子会社側の思惑と親会社側の要望は一致していない。
- 子会社社員の人脈作りや実績作りは、親会社社員にとっては無関係。
- 親会社社員は、子会社社員の育成に興味はない。
出向先上司より、「即戦力が欲しかったのに、君のような(スキルのない)人たちに来てもらっても困る」などと言われ、事あるごとに出向者批判を受けていました。
子会社からの出向者は、親会社社員と同じ目標に向かって日々の業務に取り組んでいく訳ですが、別に歓迎されてはいません。(組織としては、「よく来てくれました!」みたいなことを言うでしょうがね…)
出向者が親会社社員から歓迎されない原因を探る前に、そもそも出向(出向者)がどのように決定されるかを考えてみます。
ここでは、筆者が出向した年代(入社1~3年目程度)の若手社員の出向のケースを考えます。
①子会社側の思惑としては、次のようなものが考えられます。
- 親会社との人脈作り
- 子会社では経験できない仕事を通しての出向者のスキルアップ
- 親会社とのパイプ役となり、帰任後のキーマンとなる人材の育成
- 親会社の技術展開を図り、子会社の技術向上に貢献できる人材の育成
②親会社側の要望としては、次のようなものが考えられます。
- 人員不足なプロジェクトへの補填
これだけです(泣)
「とりあえず、定められた期間、ちゃんと仕事してくれればいいよ、以上!」みたいな感じです。
基本的に、忙しいから人員増加を要求している訳で、「子会社さんの(若手)社員を育成してあげるよ♪」というような親心のある親会社社員はいません。
ここで問題となるのが、新人とか、入社2、3年目で経験不足な若手が出向者として選ばれてしまった場合です。
要は、子会社側の思惑と親会社側の要望とのギャップが激しい場合です。
子会社側は、バリバリ育成重視の出向だと捉えて「新人」を送り出しています。
ところが、親会社としては人員不足を補填したくて出向を要請しているので「新人」に出向されて頭数だけ整えられても困るのです。
親・子会社間で出向に対する意向にギャップが大きい場合、一番辛いのは出向者本人です。
出向者を決定した子会社上司でも、出向を要請してきた親会社社員でもありません。
受け入れる立場に立つと、「一定期間でいなくなることが確定している人間を育成しても仕方ない」という心理もあるようです。
私は大手子会社の精密機器メーカーへ新卒入社しました。配属先は機械設計の部署でしたが、設計の機会には恵まれず、製品評価を主に担当していました。当然、設計のスキルも経験も乏しく、まだまだ未熟なひよっこ設計者でした。
そんな私のもとに出向の赤紙が届いたのは入社2年目半ばのことです。出向先は新機種立ち上げを行っている親会社の製品設計部署でした。
「これで思う存分、機械設計に携われる。」
「スキルアップして戻ってきてやる!」と意気込んで出向先へ着任しましたが、現実は厳しいものでした。
出向先の意向としては、子会社社員の育成のために人を呼んだのではなく業務の応援をしてほしかったのです。
要は、手をかけてあげないと任務が務まらないような新人に来てもらっても、かえって迷惑だった訳です。
最終的には、新製品立ち上げまでの期間をなんとか勤め上げ、子会社へ帰任することができました。
しかし、その道中は思い出すのも嫌になる程、散々なものでした。
「よく生きて帰ってこれたなあ」と今でも思います(笑)
親会社への出向時期や回数は、子会社の新人設計者には分からない
出向前に予定期間を言われていたが、度重なる期間延長で予定より帰任予定時期が何度も変わった。
子会社に在籍している以上、生活拠点が数年おきに入れ替わる可能性があることを覚悟しなければいけません。
一度、出向の任務を完了し本籍企業(子会社)へ帰任となっても、再度、出向要請がかかる可能性は十分にあります。
その際、出向要請がかかる時期は要請直前までわからないです。
また、出向期間は予定通りの長さになるとは限らず、実際には任務を終えて帰任するまでわかりません。
大まかな出向期間は出向前に示されるでしょうが、計画変更により出向期間が延長されることもしばしばです。
出向期間が予定よりも延長される理由は次のような場合です。
- 取り組んでいるプロジェクトに遅れが生じた。
- 親会社での新たなプロジェクトに充てがわれた。
大手子会社(特に生産工場)は、地方に所在していることが多いです。
わざわざ地方の工場に新卒入社する人は、その勤務地も志望動機(あるいは入社理由)から欠かせないでしょう。
もし「全国転勤ウェルカム!」の人なら、地方に本拠地がある工場を初めから選択する人は少ないのではないでしょうか。
勤務地や生活スタイルの変更を会社の決定に大きく依存してしまうことも、子会社社員にとって辛いことの一つです。
私は転職したこともあり、幸いにして出向経験は一度で済みました。
同じ部署には、出向解除からの帰任直後に出向先へとんぼ返りとなった後輩(後輩Xとします)がいました。
後輩Xは、プロジェクトAの完結に伴い出向解除→帰任となりました。
一方、親会社ではプロジェクトAの終息と並行してプロジェクトBが立ち上がっていました。
プロジェクトBの人員要求が親会社から降りてきたことにより、新たな出向要員が必要になりました。
あろうことか、新たな出向要員の1人として、帰任してきたばかりの後輩Xがあてがわれました。
後輩Xは引っ越しを完了していましたが、落ち着く間もなく、また引っ越しして出向先に戻っていきました。
本籍企業(子会社)には1週間程度しか在籍していなかったと記憶しています。
まあ、本人が嫌でなければいいんでしょうけどね!(笑)
子会社から親会社への逆出向は、スキルアップ・実績作りにはなる
ここまで出向の悪い面のみを記載してきました。
「出向=悪」というイメージを先行させてしまったかもしれませんが、もちろん、出向して良かったと思うこともありました。
出向して良かったことに関しては、こちらに記載しました。