「CADオペレーターはやめとけ」って言われたけど本当のところはどうなの?
そんな悩みにお答えします。
本記事の内容
- 「CADオペレーターはやめとけ」と言われる理由
- CADオペレーターはやめたほうがいい人の特徴
- 「CADオペレーターはやめとけ」と断言できない理由
CADオペレーターに挑戦しようとネット検索をしていると、「CADオペレーターはやめとけ」や「CADオペレーターの仕事はもうない」といった意見を見る機会がないでしょうか?
結論からお伝えすると、やめておくべきかはその人の状況や保有スキルによります。働く条件は人それぞれなので、一概に「やめとけ」とは言えません。
わたしは10年間の機械設計業務でCADオペレーターさんには何度も助けられました。多忙な設計士のためにCADオペレーターがもっと増えてほしいというのが個人的な願いです。
そこで今回は「CADオペレーターはやめとけ」と言われる理由と、逆に「やめとけ」とは言い切れない根拠をみていきます。
CADオペレーターをやってみようか悩んでいる方、続けようか悩んでいる方は、最後まで目を通していただき判断してください。
「CADオペレーターはやめとけ」と言われる理由7つ
「やめとけ」と言われる理由は、CADオペレーターは大変なこともある割に大きく稼ぎにくいからです。ただし、「やめとけ」と言われている人の立場や状況によって、受け取り方は変わってきます。
具体的な内容をチェックしていきましょう。
理由①一般的に高収入ではないから
まず初めにCADオペレーターは、基本的には年収が高い職業ではないです。
転職サイト dodaのデータでは、CADオペレーター(機械)の平均年収は356万円。(2020年9月~2021年8月のデータ)これに対して給与所得者全体の平均年収は400万円台半ばなので、CADオペレーターの平均年収は全体平均値を下回っています。
CADオペレーターは機械や建築設計を補佐する役なので、その分、給与は低く設定されていることが多いのですね。
こちらの記事で、なぜCADオペレーターの年収が低いのか考察しています。
理由②派遣社員が多いから
加えてCADオペレーターが高収入でない要因は、派遣社員や契約社員で働く人が多いからです。
公開されている求人数を見てみても、正社員よりも派遣や契約社員の募集のほうが多く出ています。
一般的に、企業が正社員で欲しい人材はオペレーターよりも設計士が優先です。設計士は、専門技術や実践経験がより重要視されるので正社員雇用の優先度は高くなります。
派遣社員で働く場合は賞与が出なかったり、時給が上がりにくかったりするので、正社員よりも年収が低くなりがち。
ただし派遣社員の働き方にメリットを感じられる方なら、十分、魅力的な職種です。
理由③ソフトが変わると覚えなおしが必要だから
そしてCADは1つのソフトを覚えれば万全ということはなく、別のソフトを使うには、その都度、使い方を取得しなければならない内容も出てきます。
たとえば機械系のCADだけで考えてみても、CADソフトの種類はたくさんあるのです。
業界や業種により使っているCADの機能は異なりますし、どのソフトを使うかは会社で決めるのでオペレーター自身では決められません。
長くCADオペレーターをやっていると、勤務先の変更や導入されるCADシステム更新に伴い、扱うCADソフトを変えざるを得ないときも……
1つのCADソフトを扱えるようになったところで、ずっと同じソフトで仕事が続けられるとは限らないから「やめとけ」と言われます。
ただ、同じ分野のCADなら「ソフトが変わるたびに1から覚えなおし」とまではいきません。
機械系CADソフトを1つ使用して「CADとはどんなものか」を理解していれば、別の機械系CADを覚える労力は初めて覚える時よりも圧倒的に少ないからです。
理由④簡単なCAD業務が減ってきたから
仕事内容はどうかというと、簡単なCAD業務だけの担い手は少なくなりました。
CADオペレーターの仕事というと、手書き図面をCAD図面に清書したり、2次元図面を元に3次元モデルを作成したりといった作業を思い浮かべると思います。
もちろん、CAD図面を起こす作業や図面の3次元化の仕事もまだまだありますが、その量は減ってきたのが実情です。
その理由は「CADオペレーターの仕事はない」と言われる要因を解説【求人はまだ見つかる】で深掘りしました。
ですが、CAD図面への書き起こし作業はCADオペレーターの業務の1つにすぎず、他にも必要性はあります。
CADオペレーターの仕事は「CAD図面起こしや修正作業だけ」とイメージしている方が、「今どきCADオペレーターなんて必要ないからやめとけ」と言っているのかもしれませんね。
理由⑤CAD以外の仕事もやらされるから
上の項目で見ていただいたように、CADを専任で担当するオペレーターの需要は減少しています。
そこで今では、物品の発注業務や見積書の作成などの事務作業と、CAD業務とを兼任するケースが出てきました。
下に載せた例は、CAD業務+一般事務全般サポートの求人です。
CAD以外の仕事もやるとなると、その分、覚えることは増えてしまいます。
また、必然的に複数業務を同時並行でこなすので、業務依頼が重なると大変です。
CAD事務の求人例
理由⑥下請け仕事が多いから
次に立場上の話として、CADオペレーターは下請け的なポジションで仕事することが多いです。
自分が先頭に立って業務を推進していくよりも、設計士などの依頼主へ指示された内容を返す仕事が多いイメージ。
立場が違う理由は、設計士が上とかオペレーターが下といった話ではなく、役割が違うからです。
1から仕事を作り上げたい人や、指示通りに動くだけではやりがいを感じない人からすると、そういった下請け的な仕事ばかり行うのは「やめとけ」となるでしょう。
逆に言うと、自分で色々考えるのは苦手で、ちゃんと指示を与えてくれる人の元で働きたい方なら、「やめる」必要は全然ないですね。
理由⑦急な仕事もあるから
さらに大変なこととして、CADオペレーターはいつも自分のペースで仕事に取り組めるとは限りません。
人から依頼された仕事の遂行が主なので、仕事のペースを自分の都合だけでは決められないからです。
依頼主から「なんとか今日中にやって」なんてお願いされ、急に残業となることもあるでしょう。
時には急な依頼にも対応しないといけないのが、CADオペレーターの辛いところです。
CADオペレーターはやめたほうがいい人の特徴5つ
次に、CADオペレーターはやめたほうがいい人の特徴について解説していきます。
CADオペレーターはやめたほうがいい人は主に以下5つの特徴があるので、自分に当てはまるかどうかもあわせて確認していきましょう。
やめたほうがいい人
- 年収の大きさで仕事を選びたい人
- 定年まで1つの会社で働き続けたい人
- パソコン仕事が嫌いな人
- CADだけを覚えればいいと思っている人
- 自由度の高い仕事をしたい人
特徴①年収の大きさで仕事を選びたい人
とにかくたくさん稼ぎたい、という方はやめた方がいいです。
前述の通りCADオペレーターは特別、年収が高い職業ではありません。
働き方や業務内容など、収入面以外にメリットを感じられる方に目指していただきたいです。
特徴②定年まで1つの会社で働き続けたい人
定年までの数十年間、1つの会社に勤め続けたい人は別の道も検討してみて下さい。
定年まで1つの会社にCADオペレーターとして勤めるとなるとハードルが高いです。
CADの勉強をしている学生さんは、設計の勉強もして設計士として就職し専門知識と経験を積んでいってください。
逆にすでに社会経験があり、これから何か新しい仕事に就きたい方にとっては、CADオペレーターを始めるのは悪くない選択肢です。
特徴③パソコン仕事が嫌いな人
CADオペレーターはパソコンに向き合う時間が長いので、パソコン仕事が嫌いな人はやめたほうがいいですね。
図面や3Dモデルを作成する過程で、オペレーターは長時間集中してパソコンに向き合う必要があります。
また物品の発注業務や見積書の作成など、CAD以外の業務もパソコンで行うことがほとんどです。
CADオペレーターとパソコンは、切っても切れない関係といえますね。
特徴④CADだけ覚えればいいと思っている人
CADオペレーターは、「CAD操作だけを習得すればいい」と思っている人は思い直してください。
たとえば見積書の作成を任せられたなら、見積書作成のルールや処理方法などCAD以外の仕事も覚える必要があります。
もちろんメインはCAD業務ですし、その他の仕事はやらなくてよい職場も中にはあるでしょう。
しかし色々な仕事ができる方が長く働けますし、なにより一緒に働く設計士からの信頼につながります。
CAD以外の仕事にも取り組み、「CADだけオペレーター」にならないよう気を付けて下さい。
特徴⑤自由度の高い仕事をしたい人
人から依頼される業務がメインなので、オペレーター個人の自由度は高くないです。
基本的には依頼主の意向にそった形になるよう、仕事のアウトプットをしましょう。
自分のやり方、考え方にこだわりすぎるのはNGです。
設計ミスに気づいたときの指摘や業務改善の提案は、積極的にやってOK。
CADオペレーターには、「自分がどうしたいか」よりも「相手がどうしてほしいか」という視点があるとよいです。
「CADオペレーターはやめとけ」と断言できない理由5つ
ここまで見ていただいた通り、CADオペレーターには「やめとけ」と言われる要因があるのは確かです。
そんなCADオペレーターにも「やめとけ」と全否定できない要因があるので、順番に解説します。
やめとけと断言できない理由
- 未経験でも仕事に就けるから
- 多様な働き方を選べるから
- 今後もなくならないから
- 年齢を重ねても続けられる仕事だから
- キャリアアップを目指せるから
理由①実務未経験でも仕事に就けるから
CADオペレーターは、実務未経験・無資格でもなれることがメリットです。
たとえば一般的な事務職は労働条件がよく常に人気で競争率が高いです。経験者との競争になって不採用にされることもあるでしょう。
未経験からできる仕事は他にもありますが、体力的にきつかったり、休みが不規則だったりするものも多いので、働く条件に合致しないことも考えられます。
労働条件がよくて未経験からでもなれる、数少ない仕事の1つです。
理由②多様な働き方を選べるから
CADオペレーターの働き方には正社員の他、派遣社員やアルバイトの場合があります。コロナ禍の影響で在宅勤務のオペレーターも増えてきました。
ご自身の条件に働き方を合わせやすいのも、CADオペレーターのメリットです。
さらに今後は終身雇用の崩壊により、フリーランス人口が増えると言われています。そうなると将来的にはフリーランスCADオペレーターが増えるかもしれません。
今のうちからCADに取り組んでおくと、将来の仕事につながるチャンスが広がりますね。
理由③CADは今後もなくならないから
CADは将来性のある分野です。
環境変化が激しいこの時代においても、ものづくりがなくならない限りCADがなくなることは今後もありません。
REPORTOCEANが発行したレポートによると、世界の3D CADソフトウェア市場は2021年から2027年の期間で6.5%以上の成長率が見込まれており、その額は2027年までに147億6,000万米ドルに達する見込み。
コロナ禍を受け、最近はクラウドシステムへ移行するCADが増えています。
CADシステムが進化する中、形状の最適化にAIを活用する動きはありますが活用範囲はまだまだ限定的です。
完全にAIへの置き換えるのは難しいので、CADを扱う人はこれから先も必要です。
CADオペレーターの将来性は「CADオペレーターの将来性は本当にないのか、元機械設計士が解説!」で紹介していますので、合わせてご覧ください。
理由④年齢を重ねても続けられる仕事だから
CADオペレーターは肉体的負担が少ないので、ベテランになっても続けられます。そういった意味では女性でも長く続けられる仕事と言えますね。
実際にわたしの以前の職場では、50代のおばさんオペレーター(失礼!)もいました。CADスキルが高く活躍されていたので、設計士はみんな助かっていました。
スキルと経験があれば、CADオペレーターは何歳まででも働きやすい仕事ですね。
理由⑤キャリアアップを目指せるから
CADの技術を磨いて評価されれば、スキルを活かしたキャリアアップを目指すのも可能です。たとえば次のような職種です。
目指せる職種
- 機械や建築の設計職
- CAD講習の講師
- CADシステムのサポート部門
オペレーターから設計への転身は現実的でないと思うかもしれませんが、実際に次の求人例では、将来的に金型設計全般を担うところまでキャリアアップの可能性があります。
ただしキャリアップは能力があること前提なので、まずはスキルアップしていくことが重要です。
まとめ:CADオペレーターはまだまだ捨てがたい
「CADオペレーターはやめとけ」と言われる理由を見ていただきました。
たしかに人気絶頂の職業ではないかもしれませんが、人によってはまだまだ捨てがたい仕事です。
この記事を読んでいただいてご自身の適性が気になった方は、「CADオペレーターに向いてる人」に該当しているかも確認してみて下さい。