CADオペレーターには将来性はないって聞くけど、実際どうなの?
将来的になくなる職業なの?
こんな悩みにお答えしていきます。
本記事の内容
- CADの将来性は高い
- CADオペレーターの将来性に不安を感じる理由
- CADオペレーターの将来性に期待してよい理由
- 将来的に身につけたいスキル
- 将来的な働き方
結論から言って、CADオペレーターという職業そのもので将来性を計ることはできません。将来性の有無は、本人の働き方や意識で変わってきます。
将来性が明るい見通しとしては、CAD需要の増加があります。CADの需要は増え続けているので、そのCADを満足に扱える人が減ってしまったら困ります。一方でAIなどの発展により、ただ単にCADソフトの操作ができるだけのオペレーターは将来的には生き残れない可能性が高いです。
本記事の著者は、機械設計士として10年以上勤務し「生き残れるCADオペレーター」をみてきました。
この記事では、CADオペレーターの将来性に期待できる要因や活躍し続けるためのポイントを解説していきます。
CADの将来性は高い
CADオペレーターの将来性をみる前に、CADの将来性はどうなのかチェックしていきましょう。
結論、CADの将来性は高いです。「Research and Markets社」のレポートでは、3D CADシステムの市場規模は2027年までに154億2000万米ドルに達すると推定しています。
同レポートでは、3D CAD市場の成長要因として次の項目をあげています。
3D CAD市場の成長要因
- コンピューター上で製品の仮想試作の更なる促進
- 写真のようなリアルなイメージ図を作成でき、販売活動に活かせる
- 3Dプリンターの普及による3D CAD需要の増加
このほかにも、コロナ禍で促進されたクラウド化への対応やAIの活用など、CADは今後も発展の余地ありです。
CADが登場してから数十年経ちますが、CADの市場はまだまだ成長しています。
CADオペレーターの将来性に不安を感じる理由
次に、CADオペレーターの将来性をみていきます。まずは将来性に不安を感じてしまう理由からです。
- オペレーター需要が減っている
- AIに仕事を奪われる
具体的な理由と対応策を解説します。
理由①オペレーター需要が減っている
現実として、CADオペレーター需要は昔よりも減っています。
CADオペレーター需要が減った要因を一言で言うなら、「CAD専任で実務するオペレーターの必要性が減ったから」です。パソコン性能やCADソフトの進化、企業の設計開発ノウハウの蓄積詳細などにより、単純な入力作業者は減ってきました。詳しい要因は、『「CADオペレーターの仕事はない」と言われる要因を解説【求人はまだ見つかる】』で考察しています。
「オペレーター需要の減少=仕事量の減少」ととらえると、将来に不安を感じてしまうことでしょう。
ただし、ここでいう仕事が減っている人は、CADでの単純作業のみを行うオペレーターです。CADオペレーターの仕事は単純なCAD作業しかないとイメージされがち。中にはそれを受けて「CADオペレーターなんてやめとけ」と言っている人たちもいるのです。
設計やCAD周辺の業務にも手を広げていけば、CADオペレーターにもまだまだ将来性があります。
理由②AIに仕事を奪われる
CADオペレーターの仕事は、将来的にAI(人工知能)に奪われるのではないか心配な方もいらっしゃるでしょう。
野村総合研究所が2015年に発表した「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」によると、CADオペレーターはAIなどに代替される可能性が高い職業とされています。
たとえば単純な寸法引きや、2次元図面を3次元にするような定型的な作業は、この先AIに仕事を奪われる可能性が高いでしょう。
逆にAIなどでの代替が難しい職業の特徴として、次の3つがあげられています。
AIに代替されにくい仕事
- 創造性が必要な業務
- 協調性が必要な業務
- 非定型な業務
上記がすべて当てはまる職業が設計士の仕事です。そして、その設計士を補佐するのがCADオペレーターに求められる役割。
時には複数の設計士と同時並行でのやりとりが発生します。頭が混乱して「CADオペレーターってしんどい」と思うこともあるでしょう。設計士が創造的な業務に専念できるよう、自分なりに工夫しながら対応できればAIに代替されないCADオペレーターになっています。
厳しい話ですが、「人に言われたことをこなすだけの作業者」では先行きが厳しいのは他の職業と同じです。
CADオペレーターの将来性に期待してよい理由
続いて、CADオペレーターの将来性に期待してよい理由です。
- CADはなくならない
- CADスキルは応用が利く
- 人材不足なので活躍しやすい
それぞれの根拠も解説していきます。
理由①CADはなくならない
初めに断言します。CADは今後もなくなりません。そのためCADを操作する人はこれから先も必要になります。
CADがなくならない理由
- ものづくりがなくならない限り、CADは必要
- 近年は、ものづくり以外の用途も増加
- ゆえに、CAD市場は成長している
ただしCADが存続しつづけようが、単にCAD操作ができるだけのオペレーターは生き残りが厳しくなっています。
CAD周辺のシステムも扱えるようになったり、設計関連の文書作成を補助できるようになったり、「CADプラスα」の持ち味をつけていきましょう。
最近は、商品宣伝イメージの素材として、3D CADデータの需要が増えてきたと感じています。
理由②CADスキルは応用が利く
特に3D CADのスキルは、他の技術へいろいろと応用が利きます。今や図面を書くことだけがCADの役割ではなくなりました。
たとえば3D CADは、次のような技術に応用されています。
3D CADの応用先
- AR、VR
- 3Dアニメーション
- 3Dプリンター、3Dスキャナ
今からCADに触れておくことで、今後新たな仕事が生まれたときに参入できるので、その際に転職もしやすいですね。
3D CADと3Dプリンターがあれば、オリジナルのクッキー型なんかも手軽に作れます!
理由③人材不足なので活躍しやすい
一般事務などと比べるとCADオペレーターの就職競争率は激しくないので、しっかりと技術を身につければ活躍するチャンスが多いでしょう。また、スキルを身につけたCADオペレーターは何歳まででも活躍しやすいです。
人材不足の原因はCADを身につける人がそもそも少ないからで、専門性の高い3D CADのオペレーターに至っては特に人材不足が顕著。CADスキルは文章作成やプレゼンテーション力などの汎用的な能力とは異なり、限られた人しか身につけようとしません。
加えて、CAD以外のツールも扱える、設計文書も作成できるといった「プラスαのスキル」をもったオペレーターはなかなかいません。
CADを満足に扱えるようになっておけば、周りの一般事務などの人と差別化が図れるので将来的にも活きてきます。
CADオペレーターは求人サイトなどでいつも募集されているので、やはり人材不足なんですね。
CADオペレーターが将来的に身につけたいスキル
CADオペレーターで将来的にも活躍し続けるため、CADの他にも習得したいスキルがあります。
CADと関連性が高いものを3つ紹介しますので、さらなるスキルアップを考えてみて下さい。
- CAM
- CAE
- PDM
興味をもてそうなものがあったら、ご自身でも調べてみて下さい。
①CAM
CAM(キャム)とは「Computer-aided manufacturing」の略語で、日本語では「コンピュータ支援製造」と言われます。
CAMは、工作機械という「部品を作り出す装置」のプログラムを作成するためのツールです。
このプログラムは作りたい部品の形や材質によって中身が異なるのですが、CADデータをCAMと連携させると、CADモデルの形に応じたプログラムが作成されます。
CADでモデリングをしていくうちに機械加工にも興味が出てきた方は、深掘りされてみれもいいですね。
②CAE
CAE(シーエーイー)とは「computer-aided engineering」の略で、コンピューター計算で設計開発を支援するためのツールのことです。
3D CADのデータを使ってパソコン上で模擬実験(シミュレーション)を行います。ちなみにCAMは「キャム」と読むのに、CAEは「キャエ」とは読まないので注意してください。
現物がなくてもCADデータがあれば計算結果を確認できるので、CAEは「より早く・安く」設計開発を進めるのに役立っています。
CAEにはいくつかの種類があり、設計の目的によって使い分けます。
一例として強度解析では、パソコン上で強度の計算をして「強くするにはどんな形に設計すべきか」を検討します。
CAEの計算条件を考えるにはノウハウや専門知識が必要ですが、ソフト操作自体は、CADと同じで覚えればできるものです。材料力学うんぬんの知識がなくても、CAEソフトを操作して計算結果を算出することは、3D CADを扱えるオペレーターさんなら難なくこなせるようになると思います。ただし、計算条件は設計士がちゃんと考えて指示してもらう前提です。
CADを覚えるのと同じ感覚でCAEソフトの操作も覚えれば、他のオペレーターと差別化を図れます。
CAEの設定はけっこう面倒くさいので、オペレーターさんや後輩によくお願いしてました……
③PDM
PDM(ピーディーエム)とは「Product Data Management」の略で、製品の部品構成表やCADデータを効率的に管理するためのシステムです。部品構成表のことをBOM(ボム)といいます。「Bill Of Materials」の略です。
このPDMやBOMがきちんと機能していないと、CADデータの保管や構成部品情報の管理が煩雑になり、設計士の業務は滞ります。
BOM作成とは結局のところリスト作成なので、これもシステムの操作を覚えればできます。設計の専門知識は不要です。
普段触っているCADの部品構成とBOMを照らし合わせ、BOMの作成・修正もお願いできると、任せてもらえる仕事の範囲が広がりますね。
BOM変更が必要なときは切羽詰まっていることが多いので、簡単な指示を元にシステム上での修正をしてもらえると、とても助かりました。
以上のように、設計業務を直接できなくてもサポートならできる仕事は、CADオペレーターには色々とあるのです。
CADオペレーターの将来的な働き方
CADオペレーターのメリット1つに、働き方の選択肢が多いことがあります。
具体的には、雇用形態の違いや在宅勤務の有無で以下3つに分けました。
- 正社員
- 派遣社員やアルバイト
- 副業・フリーランス
ご自身のライフスタイルに合わせた働き方を探してみて下さい。
働き方①正社員
CAD業務でのキャリアアップを目指していくなら、正社員としてどっぷりとCADに浸かってください。
現在正社員ではない方でも、経験と実績があれば正社員になることは可能です。
その際には、「CADプラスα」のスキルや実績を求められます。
設計士やCAD講師など、別の職種で正社員になる道を選ぶのもありですね。
働き方②派遣社員やアルバイト
ワークライフバランスを優先するなら、派遣社員やアルバイトでCADオペレーターを行うのもありです。
出産や育児で仕事を離れた女性の方や、フルタイム勤務は難しい方にもおすすめの働き方です。
いったんCADを習得していれば、多少のブランクがあっても再就職しやすいでしょう。
ただ、どうしても年収は正社員より低くなりがちなので、バランスを考えて選択してください。
働き方③副業・フリーランス
案件数はまだ少ないですが、副業やフリーランスのCADオペレーターとして生きていく道もあります。
注意点は、他の働き方と違って初期投資が必要です。仕事で必要なCADソフトやパソコンを自分で準備する必要があるからです。CADの処理には高いスペックのパソコンが必要で、価格は安くても20万円はします。
安くない初期投資がかかるので、CAD初心者にはちょっとおすすめできないですね……
ただ、フリーランス人口は増加傾向なので、今のうちから少しづつ参入しておくと将来大きく花開くかもしれません。
まとめ:将来性の高いCADオペレーターになれるかは自分次第
本記事ではCADオペレーターの将来性について解説しました。
将来性の高いCADオペレーターになれるかは、結局のところ自分次第です。また、将来性の高いCADオペレーターになるには、「人に言われたことをこなすだけの作業者」から脱却する必要があります。
将来性を高めるポイント
- CAD周辺のツールも扱えるようになる
- CAD以外の業務にも手を広げる
- 自分なりに工夫して非定型な業務もできるようにする
今回紹介した活躍ポイントも踏まえつつ、将来性の高い働き方を目指していきましょう。